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モラルハラスメント(感情的虐待)の6つの特徴と、EQを活用した5つ対処法

emotional abuse and emotional intelligence DAIJOUBU-EQ.org

セクハラやパワハラという言葉に次いで、モラハラという言葉が聞かれるようになって10年程でしょうか。その後にはマタハラ(マタニティ・ハラスメント)やアルハラ(アルコール・ハラスメント)なども聞くようになりました。

そもそも、「ハラスメント」という言葉の定義を、すっと言えるでしょうか?

辞書を調べると

ハラスメント[harassment] 人を悩ますこと。優越した地位や立場を利用した嫌がらせ。

広辞苑

harassment – Intimidation, bullying, threatening, or coercive behavior, including manner of speech, usually by a superior toward a subordinate, sometimes by colleagues in an organization. See also sexual harassment.
通常、上司が部下に対して、時には組織の同僚に対して行う、威嚇、いじめ、脅迫、または威圧的な言動(話し方を含む)。

Oxford References

とあります。今回は日本語に多数の種類を伴って存在するハラスメントの中でも、「モラルハラスメント」に焦点を当てたいと思います。というのも、人格を根こそぎ否定するような言動について、日本語ではモラルハラスメント、という言葉が当てられているのを見て「英語で何と言うんだろう?」とふと疑問に思ったからです。英語ではmoral harassmentとは聞きません。

モラルハラスメントとは、相手の倫理観に対する嫌がらせを言い、「殴る」や「蹴る」といった暴力行為ではなく、発言や身振りによる攻撃を繰り返すことで、身体的・肉体的健康に害を与える点が特徴です。

意味から近い英語の言葉を探してたどりついたのが、Emotional abuse; 感情的虐待でした。

この言葉を発見した時、言い表せぬ怖さや罪悪感のような、大きく重たい苦さを感じました。セクハラやパワハラ、モラハラといった形で「ハラスメント」と聞いていたときと、私の心に与えた深刻度がとても異なったのです。すべてのハラスメントは虐待と言えます。そして更に、感情知能EQを学ぶようになって6年程、感情をいろいろな角度から眺め学んできたひとりとして、感情に対する虐待、という言葉がとても鋭利なものに感じられました。

このコラムでは、インドでメンタルヘルスケアを提唱する団体FeelJoyの記事を一部参考にしながら、モラルハラスメント≒感情的虐待の特徴と、加害的立場・被害的立場の両方について、EQの5つの使い方をご提案します。

モラルハラスメント;感情的虐待とは

モラルハラスメント;感情的虐待とは、虐待の一形態であり、不安、慢性うつ病、心的外傷後ストレス障害などの心理的トラウマをもたらす可能性のある行動を他者に与える攻撃となる言動のことです。この虐待はとにかく目に見えない心に傷をもたらすため、認識されにくいことが特徴でもあります。見えないからこそ相対的に特定することが難しく、専門的で共感的な視点や姿勢を持たない場合には軽んじて扱われてしまうことも大いにあります。

モラルハラスメント;感情的虐待は、心に大きな影響を与える暴力であり、虐待された人はしばしば無価値感・無力感を感じ、生きるための力や希望を失います。アメリカのメンタルヘルスの専門家Kathryn Patricelliによると、感情的虐待は、その後の人生の長期に渡るとても深刻な傷を残す可能性があるとのこと。「ある人が特定の人に対し言葉や身振りを使って不適切に批判をする」この虐待は、加害者が被虐待者を蔑み、それによって、自分は愛されていない、自分には尊厳などない、と感じさせます。被虐待者が生き生きと活気のある日々を生きるのはおろか、健康的な日々の暮らしもままならないと感じ、鬱など精神的な症状の要因となります。

モラルハラスメント;感情的虐待とは、相手の感情や思考を支配しようとすることです。身体的虐待との唯一の違いは、感情的虐待者は、殴る、蹴る、つねる、つかむ、押すなどの物理的な危害を加えません。むしろ、感情的虐待の加害者は、感情そのものを自分の武器として使うのです。一般的に、感情的虐待の加害者は、自分が虐待していることに気づいていません。むしろある種の被害者的認識があり、大きな不安を抱えていて、衝動的に相手を言葉や態度で攻撃したり、起こっていることをすべて相手のせいにしたり、執着的な言動をする正当性があると認識している場合があります。相手を責めること、問い詰めること、監視することは、感情的虐待の一形態です。

またこの虐待は、過去の体験を反映している場合が多く、自らも中長期にわたりハラスメント行為や虐待など、人としての尊厳を虐げられるような現場を目の当たりにしていた、あるいはその被害者だった場合に、自分に起こっていたことを正当化するために自らも加害者になる場合がある、あるいは自ら被虐待者であることを無意識のうちに選んでいる場合があると言われています。

感情的虐待の、6つの特徴的な言動

威嚇や脅迫

怒鳴ったり、攻撃的な態度をとったり、一般的に相手に恐怖を感じさせるようなことです。これはしばしば、相手を小さく見せ、自分に対して立ち上がるのをやめさせる方法として行われます。

批判

悪口を言ったり、不快なコメントや皮肉なコメントを浴びせることです。人の自尊心と自信を低下させ、気力を失わせる可能性が大いにあります。

弱体化

意見を公然と否定・批判したり、また意見や文句を言うと過敏に反応している・ヒステリーである、と相手の立場を悪く見せたりすることです。また他のハラスメントでも見受けられるように、残酷な言動を浴びせた後に突然態度を豹変させ親切にしたりして、相手を自分に依存させるようにすることも含まれます。

罪悪感を抱かせる

自殺すると脅したり、感情を爆発させたりする明らかな感情的恐喝から、すぐに不機嫌になったり、無視をしたり、様々な態度を通じて相手に原因があると思わせ相手を操る方法です。

経済的虐待

家庭内において必要な金銭の共有を行わず、あるいは関与させず、就職などの収入を得て自立する機会を妨害するといった行為です。相手が自立し、自分自身で選択することができ、自分の力で生きていくことができる、と感じるのを妨げるために行われている可能性があります。

行動のルールを一方的に課す

何をしてよくて、何をしてはいけないかを決めて押し付けることです。上記5つの項目からも明らかなように、モラルハラスメント;感情的虐待とは、一般的に支配を目的としたものです。年齢や環境による正当な危機管理の目的でなく、相手がいつ・どこに出かけてもいい、とか、相手が何をすれば何をしても良いと言ったり、本来本人の意思で選択をして良いはずの服装や髪型をコントロールすることによって、自分には選択・決定する権利がない、自分は不足している、と自覚させようと仕向けるために行われている場合があります。

モラハラ;感情的虐待に気づくポイントは、「支配」と「委縮」

心の中は見えないため、それによって被虐待者の中にどれほどの傷が生じているかはわかりにくいです。しかし、構造・状況に対するフラットな思考による視点と、被虐待者(状況における弱者)への共感力・想像力によって発見を早期化することができます。

[1]支配的構造に気づく
年齢や性別、人種などのあらゆる違いは、支配・被支配を肯定する理由にはなりません。あらゆる違いによらず、すべての個人は尊重されるべきで、尊厳を持って生きる権利があります。本来対等であることができるはずの人間関係において、立場や理屈、権力を背景とした支配が発生していませんか?無意識のうちに、目の前にある支配的構造に対して疑問を持てなくなっていませんか?

[2]被虐待者の心身の委縮に気づく
自身を不必要にちっぽけに感じたり、自由に表現できない状況にあったり、自分自身の選択や決定であるのに誰かから承認を得なければならないと考えたり、自分の存在意義や価値(自尊心)について否定的な影響を与えるようであれば、その関係は感情的虐待です。

両方が同時に確認できた際には、すでにモラルハラスメント;感情的虐待であると言えます。ですが、どちらか一方が発生していると感じた場合はある程度の虐待が含まれていると考えます。悪化する前に初期段階で対処することで、その後の克服のプロセスを短縮化することが可能になります。

モラルハラスメント;感情的虐待をする人の目的は、あなたの自尊心や自立心を削り取ることです。逃げ場がない、あるいはパートナーがいなければ何もできないと感じさせ、依存状態を作り出します。身体的虐待と同じように破壊的で有害で、メンタルヘルスへの影響は長期に渡る重度なものとなる可能性が高いです。

また、加害者・被虐待者どちらも、有害性に気づけないまま常態化していくケースも多く見られます。家庭内や教室の中、会社のチーム内など閉鎖的な空間で起こることが多く、更にその状態を「カルチャー」などといった言葉で正当化されることまであるため、判別しにくいからでしょう。

本来尊厳があるはずの個人の健全な発達と成長を妨げる環境要因となり、将来の人間関係において感情的虐待の積極的な加害者・被虐待者となることもをすることになることが多くありますが、被虐待者側が学習性無力感*1の状況に陥り、被虐待者自身で状況に疑問を持ったり問題視したりできないケースが多数存在します。第三者としてモラハラ;感情的虐待の可能性を感じたら、加害者の保護・対処と同時に、被虐待者自身の認識に合わせたサポートをすることが大切です。企業や行政の用意するハラスメント相談窓口など、専門家の力を借りましょう。

*1学習性無力感とは、長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれた人や動物は、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなるという現象のこと。日本語では他の訳語に学習性絶望感学習性無気力がある。なぜ罰されるのか理由が分からないような刺激が与えられる環境によって、「何をやっても無駄だ」という認知を形成した場合に、学習に基づく無力感が生じ、うつ病に類似した症状を呈する。ポジティブ心理学を創設したマーティン・セリグマンらのオペラント条件づけによる動物実験での観察に基づいて1967年に提唱され、1980年代にはうつ病の無力感モデルを形成した。英語では Learned helplessnessのこと。

EQを活用した、モラハラ・感情的虐待の5つの克服方法

支配・服従の関係において被支配者側は、次第に自分自身の感覚を感じなくなり、相手の期待に応えようとすることを生きがいにすることがあります。感情知能EQとは、感情をコントロールするでも制御するでもなく、活用して生きていく力です。自分の本来の目的や願い、自分自身の状況・感情、そしてその二つが近づくように橋を架けるためのアクションを思案し行動を取るのが、EQの使い方です。EQを活用して生きると、人生の軸を自分の元に戻し、夢中になってエネルギーを注ぐことも、必要な時に自分を休ませることもできるようになります。モラハラ;感情的虐待関係においては、一方あるいは双方が自分のための人生を自分自身で生きている、とは言えません。支配関係は正当化され得ず、他人への義務感でもなく、自分の感情・思考・行動を誰のものにもさせずに自分自身で生きるのが人生です。

モラルハラスメント;感情的虐待は、誰もが加害者・被虐待者になり得る可能性を孕んでいます。誰かに対しては加害者で、また別の誰かに対しては被虐待者である、ということもあり得ます。

EQを活用して、加害者・被虐待者どちらもが尊厳と自信、バランスを取り戻すために役立つ方法をご提案します。

①誰の問題なのか、を明確に認識する

被虐待者は「自分のせいで」と思わされたり、そう思う癖がついていることがあります。一方加害者は「自分のせいではない」という自信があることも。どちらも、それを意識的に止めましょう。表出している行動の奥には無意識層があり、感情、思考の癖、価値観、思い込みなど、環境などの要因もあり知らぬうちにたくさんの要素を自分の中に携えています。本人でも自覚することが難しい氷山の水面下にある部分は、人によって異なる背景があって当然です。この氷山モデルを思い出し、目に見えない部分にこの言動の源泉があることを認識しましょう。同時に、相手の言動が全てでないことをわかっておきましょう。これによって、麻痺していた思考と感情が明るく・軽くなり、自分自身の状況を冷静に分析して文脈を与え、それまで全く意味不明だったことが理解に向けた一歩を踏み出すことができます。

②否定しない

双方ともに言動を否定するのはやめましょう。【1】の通り、氷山の水面下に要因があって表出しています。否定や言い訳は避け、ただ、自分が受けている言動および状況の事実を把握し、それによって今どんな感情を持っているのか、どんな悪影響が自分に起こっているのか、なぜそれは重要なのかを立ち止まって振り返ります。こうすることで、加害の勢いを和らげ、被虐待者としての立場に溺れずに済むようになるでしょう。すべてを理解し受け入れるのが難しくても大丈夫です。一度立ち止まって状況を把握しようとするだけでも、手綱を自分の元に戻し状況や言動に意図的になることができます。

④境界線を設定する

もし相手が家族などで長く付き合っていく関係性にある場合には、越えてはならない境界線を明確に設定することも重要です。境界線を越えた場合にどんな精神的・身体的変化が起こるのか、また、何が自分を幸せに感じさせ、何が自分の尊厳を大いに傷つけることなのかをお互いに把握し合い、言動について努力し合うことも大切です。自分自身を守るための境界線を強く持つことで、双方に対してモラハラ;感情的虐待の抑止力として機能します。

④自分を守りつつ、対等な立場で対面する

加害者は自分の何が相手を傷つけているのか気づいていないことが多いです。委縮せず、否定せず、「それはフェアじゃない」「それは私の尊厳を傷つけている」「それは私の問題じゃないよ」と事実をはっきりと伝えることが相手にとって気づきになることがあります。加害者は相手が自分に対して立ち上がると思っていません。だから、継続的につけ込んでいるところがあります。ただし、閉鎖的な空間でそれを伝えるのにリスクが伴うと予感する場合は、周りに人のいる飲食店で話したり、信頼できる人に同席してもらうなどして助けを得ましょう。

⑤シンプルに

加害者は無意識のうちに、人を操ったりや自分勝手な主張で相手を混乱させることがあります。加害者は、自分の言動に意識的になり、最も伝えたいことは何なのかについてシンプルでありましょう。自分を正当化しているときは、相手の立場も正当化しようと試みて視野を広げてください。被虐待者は自分に起こっていること・湧き上がる感情・本来の関係性における目的を振り返ったら、出来る限りシンプルにして伝えるようにしましょう。相手は罪悪感を与えたり、対立を不利なものと思わせようとしてくるかもしれません。しかし、問題とそうでないことの線引きをし、シンプルに明確に捉えることで自分の中に散らかる複雑さを整理することができます。これはお互いのためです。そのアクションがどうしても心身に支障を来たすと感じたら、専門家や周囲の助けを必ず得てください。どう助けを求めたらいいかわからない場合は、起こっていることをひとまず説明してみるのを試みてください。

加害者も被虐待者も、必要なのは、もっと「自分」に視点を向ける時間と自分を科学すること

EQは個に尊厳を思い出させ、生きる希望を持たせてくれます。同時に組織もまた、EQを活用してセルフチェックとセルフケアを行うことができます。学校と生徒、会社と社員、家族間においても、必要な振り返りのプロセスでしょう。

すべての人は環境からの影響を受けています。加害者であっても、その人が根こそぎすべて悪いわけでなく、そういった言動や思考に至る間にたくさんの影響を外部から受けていたり、同時に何かの被害者である場合もあります。モラルハラスメント;感情的虐待において、加害/被害は表裏一体でもあるのです。

どちらの立場にも必要なのは、自分に矢印を向ける勇気と、相手の背景に思いを巡らせる共感力ではないでしょうか?EQは、自分を科学し、自分をわかろうとするプロセスを通じて、相手への想像力・共感力を育みます。相手への想像力・共感力といった思いやりの行動は、自分をわかろうとする、自分への共感力なくしてなかなかたどり着けません。

どの立場の人も、どんな生活をしている人も、いつも感情と共に生きているのは科学的に事実です。丁寧に自分をわかろうとする時間を、ぜひ持っていただけたらと思います。

自己の振り返りや自己分析は、ひとりで取り組むと行き詰まったり、暗い闇に追い込まれてしまうことがあります。安心安全な場で探求できる自分を科学する時間をDAIJOUBUでは定期的に開催しています。ぜひ安心してご参加下さい。

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