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個を尊重するジェンダー教育とSEL

9月23日、大人のための特別クラスとして、『個を尊重するジェンダー教育とSEL ~女らしさ、男らしさ、自分らしさ』を開催しました。ゲストにアメリカ・カリフォルニア州にある世界最先端のSEL校シナプススクールでSELスペシャリストとして活躍する日本人のKeiko Satoさんをお迎えし、私まわりー(廻田彩夏)がモデレーターを務め開催しました。

シナプススクールについてはこれまでも何度か記事を書いておりますので、ぜひこちらからご覧ください。世界最先端のSELスクールで一体何が行われているのか、何を信念に、どのような雰囲気の中でひとりひとりを尊重する教育が行われているのか、垣間見えるかと思います。Keikoさんとは2020年の設立当初からこれまで、年に1~2回の特別クラスやEQコーチングでタイアップをさせていただいています。

今回は私が2022年からアリゾナ州立大学院の修士課程で「ソーシャルジャスティスと人権」を学んでいる中で、特に「社会構造と感情の関係」や、「個人がより自分らしく生きるための社会の変革」を中心に研究しているのですが、今年日本のニュースでトランスジェンダーの公共トイレ使用についてや、かねてから性別に縛られないジェンダーレスな生き方や在り方で多くの人に勇気を与えていたタレントのryuchellさんが死去したことなど、ジェンダーをまつわる内容が度々報じられています。アメリカで人種に関わる問題が社会の中心になっているように、日本の社会問題の議論の中心は男女・ジェンダーなのでは?と考え、今回はジェンダーという切り口からセルフサイエンス・SELを体験しました。

ジェンダーギャップ指数世界125位の日本のジェンダー教育を救うのは、『個を尊重する教育』の根本的なマインドセットのシフトなのでは――?参加者と探求した2時間のクラスをこちらに簡単になりますがまとめます。

今回の特別クラスの動画視聴は11月末までご購入いただけます。こちらよりお申し込みください

AかBか、という白黒ではなく、グラデーション

チェックインはお名前、どこから参加しているか、今日の自分を表すおもちゃ、で行いました。

今回参加者は日本の中でも各地に点々としていましたが、半数近くがアメリカ西海岸・東海岸、ベトナム、シンガポールと海外からの参加でした。

いまの気持ちを少し立ち止まり把握して、共有し合うのがEQチェックインですが、この日はモデレーターの私に個人的に起こったとても悲しかった出来事があり、胸がぎゅっとなり言葉が詰まり、、、けいこさんの声掛けからこのことがとても大きなEQモーメントとなって、この後も多くの参加者にインスピレーションを与えたようでした。待ってくださって、聞いてくださったみなさんに感謝しています。

選んだおもちゃから、そのままワークへ。そのおもちゃを眺めて、おんなのこっぽいか、おとこのこっぽいかを考え、あてはまる場所に★を動かしてもらいました。そしてこれをもうひとつ、「自分自身はどうか」で★を動かしてもらいました。

動画購入者はオンライン編集による参加型ワークにご参加いただけます

ジェンダーについて考える共通の見解を持つために、ジェンダーユニコーンについても紹介を。いわゆる「男・女」は、生まれたときに決定された(英語ではassignという言葉を使います)性別に過ぎず、ほかに自分が考える(自認している)ジェンダー、見た目が表すジェンダー、体/心が惹きつけられる対象、があり、こうした複数の項目がそれぞれグラデーションで混ざり合って個人が完成します。

「自分の体が女性で、自分を女性と認識していて、心身が惹きつけられる対象が男性である、ということが特権であるとは気づかなかった」という声が参加者から聞かれました。人数はともあれ、男女、で考えると女性をマイノリティ(抑圧されている側)と表現することが多いですが、ジェンダーで考えると自分がマジョリティ側にいる。社会はいろいろな事柄で別の人が、マジョリティになったり、あるいは一部のひとにばかりマイノリティのポジションが集中したりします。このことをintersectionality(交差性)と表現しますが、それはまた今度、ソーシャルジャスティスを中心としたクラスで取り扱います。

社会の期待(ステレオタイプ)が個人の意識の奥深くに知らぬ間に影響を与えている

ジェンダーとは、”男性・女性であることに基づき定められた社会的属性や機会、女性と男性、女児と男児の間における関係性、さらに女性間、男性間における相互関係を意味します。 こういった社会的属性や機会、関係性は社会的に構築され、社会化される過程(socialization process)において学習されるものです(ジェンダーとは? – UN Women – 日本事務所)。”

「ジェンダー平等 データ」とGoogle検索をして見つかった日本のデータをいくつか紹介し、その背景に家父長制社会があること、家父長制社会の特徴と、その社会がむしろ正当化しがちな事象について紹介し、意図と根拠を持ってジェンダー政策にEU全体で取り組んでいるヨーロッパ地域のジェンダー政策について情報を共有しました。

EQ委員会がアカデミアと調査研究部門で導入している5つのジェンダー平等政策がこちらです。この内容についてもさることながら、こうしてEUがジェンダー平等政策で世界の先を行くのは、北欧が取り組んだ「男性性研究」によると考えられます。ジェンダー政策において、マイノリティである女性を支援・応援する、活躍をサポートしていたところから舵を切り、特権側当事者がこの問題にアプローチをする。なぜなら、男性性を中心にした社会は、その中心を担う男性にさえも自殺・依存症などといった悪影響を及ぼしているからです。

Belonging VS Fitting in

英語のみですが、ブレネーブラウンのこちらを是非ご覧ください。

https://amzn.to/3tbMUqA

belongingとfitting inは、日本語にすると「居場所がある」「合わせる」となるでしょうか。自分らしさのままでそのままでいられるばしょはbelonging、その一員となるために自分を変えて周りやそのルールに合わせることをfitting inと言います。誰にも、belongingやfitting inどちらの経験がおありだと思います。そのときそれぞれどんな気持ちでしたか?それぞれの自分にはどんな違いがありましたか?

またクラスではステレオタイプの脅威(Streotype Threat)について、女の子のステレオタイプを1つの例にして説明。

ステレオタイプの通りにふるまえても、それ通りにうまくできなくても、どちらにしても「個のありのまま」から離れることになり、本来の実力を発揮できなくなるのがステレオタイプの脅威です。まさに”Fitting In”。

ジェンダー教育とは?

ジェンダー教育とは、世の中に存在するジェンダーにまつわる社会的・文化的・構造的な不均衡の現状について知り性別にとらわれず、自分を含むすべての人の人権を尊重し意図を持って行動する力を育むもの 。では私たちは一人の大人として、子どもたちが真実を知り、意図を持って行動できるよう、どのように子どもたちをサポートできるでしょうか?今日の学びをどう活かしますか?という質問から最後に参加者から聞こえたコメントの一部をご紹介します。

  • 言葉に意識を払う、男女を分けた言い方になっていないか、自分の固定観念が反映された言葉を使っていないかチェックする、気づけるようになりたい
  • 個を見る、その人の感情が動きだした瞬間に気づく、忙しさにかまけて流さないでその時間を取る
  • 自分の子どもたちへの声がけで、つい考え方の癖から来る表現に意識を向けたい
  • ひとりひとりがゼロからつくる、男女に捉われず、個人が心地よいものをクリエイティビティを刺激してつくるのをサポートができるかも
  • 諦めない、どうしたらひとりひとりに向き合えるか、すごく大変だけど
  • 絵本の活動をしている、ジェンダーの視点で絵本を選書したり、読んだりするとどうだろう?と思った
  • 経験がないと気づけない視界がある、気づけなさに気づけた
  • 個の見方、全体感だけでなく、小さな個のそれぞれの違い、もがいていたりする子もいるはず、既成概念を持たずに個を見て、小さな感情のにもっと目を向けたいと思った
  • 小さなことにマインドフルになる、小さな変化、気づきに目を向けていきたい
  • 誰もが自分らしさ、アイデンティティを表現できる空間(自分が働く教室)を作っていきたいと思った

だいじょうぶだから、涙を流すしかないことも勇気をだして共有し合える居場所の力

けいこさんが最後、「涙を流すしかない、怒りの感情が溢れるしかない感情も、勇気を出して見せ合える、共有し合えると思える場を一人一人がつくっているだいじょうぶな場に、参加出来て力を与えられてありがたかった」「これが人間なんだ、だいじょうぶなんだと思えた」と共有してくださり、私も感無量でした。

私たちDAIJOUBUが生まれた日にみんなで「どんな世界が理想か、これから始める活動を通じてどんな世界をつくりたいか」をブレストし言葉を書き合ったのがこちらです。

みんなで書き合ったこのシートを眺めながら「・・・だいじょうぶ?」「それだ!」とみんなで心振るわせて団体名が決まった瞬間の感覚を、いまでも覚えています。『すべての子どもたちに だいじょうぶ な世界を』届けるために、子どもが出会うひとりでも多くの大人がだいじょうぶでなくては、という思いで大人向けのクラスを続けてきて、本当にnon-judgemental(誰もジャッジしない、決めつけない)で、多くの参加者にとって、英語でいうvulnerability(弱さ、自分のかっこつけていない姿、ありのままの自分をそのまま)を見せ合える場となっていることを改めて実感した特別クラスとなりました。

終了後のコメントからも、このクラスが新たなページの幕開けとなりそう、感情を活用する次のステージに進めそう、と展望を聞かせて頂けたこと、とても嬉しかったです。

DAIJOUBUはシナプススクールの取り組むEQを尊重した、第ゼロ言語であるEQを安心安全な空間で磨ける日本唯一のプラットフォーム

EQは、どんな語学や知識よりも前の、第ゼロ言語ではないか、とここ数年私は考えていて、大学院卒業と同時に0th Languageという団体の立ち上げを計画しています。EQとEquity(誰にとっても暮らしやすい社会)はまさに両輪で、大学院に入ってからずっと打ちのめされるほど深く長く浸透しきった歴史から来る価値観や社会構造の複雑さと、それが個に与える影響の強さにたびたび眩暈をしそうになりながらも、「私らしさ」の一部である楽観性が、現在追求しているEQxソーシャルジャスティスのエリアに無限の可能性を感じています。世界はいつもよくできる、誰もが暮らしやすい社会は実現できる、と信じています。

感情知能EQ(Emotional Intelligence)というスキルは、自分が持っている力をより発揮しながら、人とつながったり距離を取ったりして、自分も相手も大切にしながら生きていけるようになるヒューマンスキルです。

DAIJOUBUはPOP-UPフェスティバルを始めとするSix Seconds GlobalのEQの取り組みに賛同をして、Six Secondsの研究所としてのシナプススクールの方針を尊重し、姿勢や取り組み方などのヒントを得て、プログラムをつくり運営しています。

今回のクラスの見逃し視聴は期間限定で公開しておりますので、ご関心ある方はぜひこちらからお申し込みください。そのほかDAIJOUBUのプログラムはこちらから、直近のイベント情報はこちらから、ご確認頂けます。ぜひクラスでお目にかかれるのを楽しみにしております。

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