「シナプススクール」ってどんな学校?
12月5日にアメリカのシナプススクールでSELスペシャリストとして活躍される、Keiko Sato-Perry先生をお招きしてお話を伺います。そこで、今日はシナプススクールがどんなところなのか、ホームページの情報からほんの一部だけ、覗いてみたいと思います。
シナプススクールはシリコンバレーに位置する、カリフォルニア州メンローパークにある私立学校。EQ開発の世界最大機関であるシックスセカンズ創設者の一人、アナベル・ジェンセンらが2009年にガレージに8人の子どもたちを集めてスタートした同校には、IT企業のエグゼクティブの子弟も含め、今や約260人の幼稚園(キンダーガーテン)から中学校までの子どもたちが通っています。
どんな学校なのかは、次の校長先生のメッセージから少し見えてきそうです。
シナプスでは生徒たちに「自分は誰だと思う?」と聞きます。私たちは子どもたちに日々意図的になるように教えています。それは、自分が何を信じ、何をするのか、私たちが日々する選択が、今の自分や未来の自分が誰であるかを決めるものだからです。
シナプスで私たちは何をしているでしょう。私たちはSEL(社会性と感情の学習)、イノベーション、最先端の学びにフォーカスすることで、チェンジメーカーを育てています。毎年カリキュラムの枠組みとなるテーマを選びます。今年のテーマは“Intersection(交わり、交差)”ですが、学校の至るところで、すでに様々なアイデアや取り組みにつながっています。
以下略
チェンジメーカーとはどんな人?
「チェンジメーカー」を育てること、がシナプススクールのミッションですが、このチェンジメーカーとはどういった人物でしょう。ホームページには以下のように書かれています。
- ポジティブかつ真正な方法で世界にインパクトを与える
- 学業、創造性、社会性・感情の領域の統合が求められる現実社会の課題に対し、確固とした準備ができている
- 数や規模で定義されない。一人の人間の人生でポジティブチェンジを起こすことは、世界にポジティブチェンジをもたらす。
校長先生のメッセージにもある毎年のテーマには、それぞれのテーマを体現するチェンジメーカーが選ばれています。例えばIntersectionというテーマに対しては、アメリカで史上二人目の女性最高裁判事で、性差別の解消に貢献したルース・ベーダ―・ギンズバーグ氏が選ばれています(アメリカでは大変有名な方のようで、興味のある方はぜひ調べてみてください)。授業ではこうしたモデルとなるチェンジメーカーを通してテーマの内容を深く掘り下げていくそうです。
シナプスの学習の狙い ― Synapse Learning Outcomes
シナプススクールでは子どもたちに未来のチェンジメーカーとして、どのようなスキルを育もうとしているのでしょうか?
シナプスの学習の狙い、として以下のようなスキルがあげられています。
コミュニケーション(Communication)
様々な相手と会話すること;他者の意見を聴く姿勢を持ち、
リフレクティブ・リスニングを心がける
視点(Perspective)
様々な視点があることを知り、
それらの視点の持つ影響やインパクトを自分で考える
フィードバック (Feedback)
フィードバックを受け入れ、よく聴き、適切な反応をする、
そして適切なフィードバックを与える。
創造性(Creativity)
ビジョンを持って創造し、
枠から抜け出して外にある力を適切に使う
やり抜く(Follow through)
様々な取り組み、コミットメント、責務について力の限りやり抜く
質問(Inquiry)
学びの探求において活発かつ適切に質問をする
深め合い(Iteration)
目標やフィードバックをよく検討し、
考えを深めたり、変化、または改善させたりしていく
擁護(Advocacy)
人や自分のために意見する
リスク(Risk)
目標やビジョン実現のために失敗のリスクを負う
こうして見ていくだけでも、シナプススクールが育てたい人物像が明確に浮かび上がってきますね。特にリスク、というのは面白いと思います。新しいことに挑戦するのには失敗がつきものです。単に「挑戦する勇気」などとするのではなく、「リスク」という言葉を使っていることに、前向きな失敗を後押しするような印象が感じられないでしょうか。
実際の授業の様子を覗いてみました
授業では具体的にどんなふうにどんなことを学んでいるのでしょう。
ブログからは様々な授業の様子も垣間見ることができます。
例として、幼稚園から4年生までのLower Schoolで行われたInnovation Studioというクラスの様子を見てみました。ここではデザイン思考を使って、様々な課題を解決する練習をしています。
幼稚園にあたるLevel1のクラスでは“秘密のメッセンジャー”から「庭の作物が誰かに食べられてしまうので助けてほしい」というメッセージを受け取り、庭を守るための方法を考えました。1,2年生のクラスでは空から落ちてくるクリップ君や鉛筆ちゃんが、そっと地面に着地できるような方法を、3,4年生はクラスメイトにインタビューをし、オンライン学習にぴったりの勉強スペースのデザインを考えます。
授業の中で子どもたちは問題を深く掘り下げ、それに対するクリエイティブな解決方法を描き、そして実際にそれを形にしてみせるのです。完成したものはクラス内で発表し、フィードバックをもらったら、またデザインに反映させるそうです。
こうした授業の内容からは、前述のスキルもたくさん必要となることが想像されます。実際に授業で実践していくことで、それらのスキルが自然と身についていくのかもしれません。
シナプスの柱、SEL
このようなスキルを培ううえでも、様々な学びをしていくうえでも、シナプススクールの柱となっているのがSELです。シナプススクールの教員たちは全員SELのトレーニングを受ける必要があり、セルフサイエンス、というSELを教科として学ぶ時間だけでなく、すべての教科の指導案には何かしらSELの要素が組み込まれることになっています。生徒たちには一日数回は気持ちの確認を行うEQチェックインが行われ、家庭でも実践がされるよう、保護者向けにもSELの講座を開催しているそうです。生徒、教員、保護者すべてが一体となって、SELを実践していけるように取り組んでいるのです。
ホームページにはSELについて以下のように記載されています;
SELの深い学びや総合的なカリキュラムを通して、生徒たちはより自己認識を高めること、より意図的になること、そしてより思いやりの心を育むことに取り組んでいます。SELとは、自分は誰か、ということなのです。
12月5日(土)21時~開催『生きる力・非認知能力を育む教育とは?』
ケイコ先生はこの最先端の学校、シナプススクールで、まさにSELを教科(セルフサイエンス)として教えていらっしゃいます。(お人柄はといえば、柔らかい笑顔と温かみのあふれる方です。)
イベントでは、シナプススクールの取り組み等をご紹介するのと同時に、皆さんのために設計されたセルフサイエンスクラスを体験していただける予定です!皆さんご自身が体験したり、考えたりすることで、果たして皆さんの中にどのような気づきが生まれるでしょうか。
そして、明日から学校やご家庭でお子さんとよりよく関わっていくためのヒントやインスピレーションもたくさんちりばめられていると思います。
まだお申込みでない方はこちらのリンクよりぜひお申込みください。たくさんの方のご参加をお待ちしております!
長い企業勤務を経て、パートナーの駐在に伴い渡英。
帰国後、EQとマインドフルネスに出会い、自分の心を信頼して生きていくことを知る。
私の人生に大きなインパクトを与えたこの二つを
たくさんの人に伝えたいとの思いから現在活動中。
二児の母。