1. HOME
  2. ブログ
  3. 子どもたちの共感性を得ていくためには~演劇教育の現場から~

子どもたちの共感性を得ていくためには~演劇教育の現場から~

場を回そうと考えないアプローチ

紅葉が見頃を迎えている今日この頃。2年ぶりに私立学校で小学3~4年生の演劇探究プロジェクトに伴走している。多様性を重んじる学園で、個性的な子どもたちが集う場での活動がスタートした。毎回のことだが、いきなり『表現する』活動するではなく、先ずは『表出する』時間を大切にしている。私個人としては、このプロセスを『解放』から『集中』へという伝え方が一番しっくりくるかもしれない。大人は、突如として表現することを期待しがちだが、先ずは遊び心をもつことを大切にして欲しい、という願いがあるので、子どもたちと一緒に動きながら、感情、思考、身体をフル回転させて進めていく。こういった演劇教育の場で、必ずと言っていいほど、参加しない子どもたちが一定数いるわけだが、輪の中に入らず、距離を保とうとする。こういった時に、皆さんならどのように声掛けするだろうか?

大声で「ちゃんとやりなさい!」「きちんとしなさい!」「しっかり取り組みなさい!」という伝え方が一般的だろうか。「ちゃんと」「きちんと」「しっかり」この3つのワードは、日常的に使っている言葉かもしれない。勿論、私自身もわが子にはどうしても使いがちになってしまう。しかしこれらの言葉を投げかけて、参加する意思が出てくるだろうか。少なくとも無理矢理進めたところで、楽しいという実感は先ず沸いてこないだろう。そしてやる気のモチベ―ションも上がっていかない。仕方なく渋々やるか、モヤモヤの感情は消えないはずだ。こういった状況下では、自身の中でやってみよう!とプランニングしていたことを全てやりこなそうとせず、また場を無理やり回そうとしないで、二つのことを実践するようにしている。

”入ってきて欲しい”と”助けて欲しい”という二つの願い

無理やり回そうとしないのなら、果たしてどうするべきなのか?例えば参加しない子どもたちをそのまま放置し、存在を無視した形でどんどん始めたらどうなるだろうか。子どもたちはもっと心を閉ざし、寧ろ自分たちの存在をアピールしようとして、場をかき乱そうとする。返って逆効果になってしまう。私はこういった時に必ず掛ける言葉がある。

「僕としては参加して欲しいんだ。だから参加したくなったら入って来て欲しいな」

そういった願いを込めた言葉を伝えるようにしている。そうすると無視や邪魔することはなくなっていくし、その場から離れることはなくなるかもしれない。彼らの心にも変化が起き、自分たちも必要な存在として認識してくれているんだ、と捉えるようになる。その後、声掛けや働きかけを一切しないかと言えばそうではなくて、ワークに参加する形とは、異なる参加の仕方を提案してみる。

「あのね、一人では出来ないから、このお題を出して欲しいんだ、手伝ってくれる?あと記録を書いておいて欲しいんだけど、お願い出来るかな?」

そうすると子どもたちは、

「分かった!」「いいよ、書いておいてあげるよ!」

といったように、別の形で協力、参加してくれるのだ。自分たちも参加しているという意識、これが段々と使命感へと変わっていき、気づいた時にはワークの中に入っていたりすることも少なくない。そんな瞬間は素直に嬉しいし、子どもたちの純な心が愛おしくなる。

その場で起こったことを否定しない大切さ

少しずつ参加してみよう、という気持ちに着火したら、子どもたちの行動は早い。この場は、自分が必要なんだという意識が芽生えると、ワークにも積極的に参加するようになってくる。また自分がやりたいことだけを押し通すのではなく、他者との関わりを通して、その場で起こったことを受け入れる姿勢に変わっていく。仲間が表現したこと、提案したことを直ぐに否定、批判、非難することは日々の中でよく起こることだが、演劇のワークで、一人の人が表現したことを受けて、否定せずに受け入れ、新しい価値を創造していく。協働するからこそストーリーが展開していくんだ、ということに体験を通して気づいていける。ここが演劇による学びの一番大きいところではないだろうか、と私は感じている。

”虚構の世界を信じる、信じあう。演劇とはなってみる学び”

演劇とは、虚構の世界を信じることで成立する世界だ。日常ではあり得ないことや、見えないものが見えるような、不思議な世界でも、状況を信じること、また信じあうことで虚構の真実が見えてくるまさに体験的ワークを通し、疑似体験することで、互いに尊重し合い、相互理解する大切さや、人生の神秘に気付いていく。道徳的な観念や理屈ではない、体感することで気づいていく学び。演劇とはなってみる学び、と言える所以はそういうところかもしれない。

EQ的アプローチを大いに活用しながら、演劇による学びの場を、軽井沢の地で実践して2年あまり。未だに実践を通してトライアンドエラーを繰り返しながら、学びの日々が続いている。この学びに終わりはないだろう。それはEQも演劇も同じこと。今後も子どもたちとの実践活動を通して、私なりに得たことを皆さんと共有していきたい、そう強く願う今日この頃である。

EQ向上委員会 生きる力を育てる演劇共育 オフィシャルページ

関連記事

NEW articles

最新情報はこちらから