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トラブルを学びに変える

「トラブルを学びに変える」この言葉は、『学校の「当たり前」をやめた。生徒も教師も変わる!公立名門校長の改革』という書籍の中に出てきた言葉です。読んだ当時、私が一番感銘を受けた言葉でした。この書籍は、元千代田区立麴町中学校校長で、現在は横浜創英中学・高等学校の校長を務める工藤勇一さんの書籍です。クラス担任制や定期テストの廃止等々、数々の改革を公立学校で実現しており、ご存知の方や書籍を読んだことがある方も多いのではないでしょうか。

「早く解決しなきゃ」と思っていたときは何も上手くいかなかった

 中学校教員時代、思春期の子どもたちですからもちろん皆さんが想像するような子ども同士の対立やトラブルは一通りあったと思います。今振り返れば、私にとっても子どもたちにとっても良い経験になっていると感じています。その当時はしんどいと感じるばかりでしたが(笑)

 トラブルが起きたり、生徒から相談があったりした時、私自身が「早く解決しなきゃ」と思って行動していたときは大抵の場合上手くいきませんでした。(時と場合やケースにもよるので一概には言えませんが)詳細な内容は言えませんが、私自身がそのようなマインドで行動した結果、子どもたちの間や子どもたちと私の間に大きな不信感が生まれ、その影響はその後長く続いたという経験があります。

 当時、「早く解決しなきゃ」と思っていた私は、事実確認を速やかに行ったりその後の対応をどうするか同僚にも相談や確認しながら対応していました。こうしてみると、完璧な対応のように聞こえるかもしれません。でも、結果は大きな不信感や軋轢を生みました。それは何故か振り返ると、そこに子どもたちの意思や考え、感情を尊重するということが圧倒的に足りていませんでした。とにかく早く解決したかった私は、多くの場面で仲介に入り、クラス全体に関わる場面では、今後の対応を子どもたちに説明した後、きっと沢山言いたいことや、思うところがあったにもかかわらず、「この問題は今日でおしまい。」と勝手に終わらせてしまいました。今思えば酷いパワープレイです。     

 当時の自分にとってはベストを尽くした結果でした。ですが、「早く解決しなければ、手遅れになる。その日のトラブル、その日のうちに。」という意識が強すぎて、(もちろん、初動の速さや対応は大切です。)大切なプロセスを疎かにしていたなと感じています。

手段が目的化していた当時

 工藤勇一さんの書籍の中で、「手段の目的化」が学校教育の問題点の1つと語られています。前述の対応をしていた当時の私は、まさにその状態でした。本来、子どもたちが自分や他者の感情に向き合ったりしながら、トラブルを乗り越えることで人間として成長し、生きる力を伸ばしていくことが一番の目的であると思っています。そのための手段として仲介に入ったり、解決に導く手助けといったことがあるはずです。ですが、当時の私は「早く解決する」ということが目的となっていました。解決するということは、成長して生きる力を伸ばすための手段の1つにしかすぎないのにです。結果、どうしたかは前述の通りです。

この出来事の後も様々なトラブルがありました。「もうどうすればいいんだよ!」と思うような状況も多々あり自分としては、何も出来なかったな、何の解決策も与えられなかったな・・・と感じたこともありました。ですが、まさにその時でした。子どもたちが何とかしようと試行錯誤したり対話したりするなかで、トラブルを上手に回避して成長する姿が見てとれました。そして、私はこうやって成長することが一番大切なことなんじゃないかと気づくことができました。だから、必要以上に仲介に入ったり、助言をしたりするのではなく、状況を把握しつつ見守ることが必要なんじゃないかと思いました。そして、タイミングや状況によってジャブのように助言をする。でも、それはあくまで解決するために答えを与えるようなスタンスではなくて、子ども自身が納得できる最適解をだせるように導くため。そしてそれが、成長に繋がると思いました。

そして学び始めたEQ

 自分が教育で大切にしたい事は何か。様々な出来事が改めて考えるきっかけを与えてくれました。そして、私自身が出した答えはシンプルでした。それは、「全ての人が幸せな人生を送ってほしい」です。そして、そのために、自分はどんな時に力を発揮できるか。自分ならどうすればトラブルを回避できるか。どうすれば他者と協働できるか。どうすれば逆境を乗り越えられるか。自分の強みは何か。その活かし方は・・・等々、「自分を知ること」が大切だと思いました。そして、それは自分自身にも必要なことだと感じました。

 幸せに生きるために、自分自身のことを知る。それはまさにEQそのものでした。EQを発揮するアプローチをしていけば、子ども自身が自分を知る事に繋がると思いました。それと同時に私自身のEQも発揮できるようになって、ロールモデルとしてその姿を見せることも大切だと思いました。当時の私はEQのことを知ってはいましたが、この時に本格的に学び始めました。それをきっかけに今となってはDAIJOUBUのメンバーをはじめ、同じ志をもった多くの方々と出会うこともできました。

変わった子どもとの関わり方。それはまさにVEET

 EQを学んで一番変わったのは、まさにトラブルや相談があったときの子どもとの関わり方です。今までは「解決策を考えて与える」ことによって早く問題を解決するというスタンスでした。しかし、それが「トラブルをきっかけに成長する」というスタンスに変わりました。そのために「解決策を子どもと一緒に考える」「子ども自身が納得のいく最適解を出すように導く」ことを心掛けるようになりました。なので、子どもが安心して何でも話せるように、いきなり否定することはせずその時の感情をを共感して受け入れることから始めました。「本当にムカつくんですよ!」ときたら「そうか、それはムカつくよな・・・」や「ムカつくしイライラしているんだよね」といった具合にです。その後、事情を確認して他に選択肢はないかを一緒に考えます。そして、その選択肢1つ1つのメリットやデメリット等を考えながら、自分にとって何が一番ベストかを一緒に考えます。そして、最後に答えを導き出せることもあれば、何日か考えさせてほしいということもありますし、いくつかの選択肢を試行錯誤しながらやってみますというパターンもあったかと思います。そこで、共通しているのは一番最初の感情が転換されて、前に向かっていく様子があることです。これはまさに、先日ケイコ先生の特別クラスで紹介していた、米シナプススクールでも実践している「VEET」そのものだと思えました。

 VEETとは、
 V→Validate emotions  感情をそのまま正当化する
 E→Examine incident   事実を確認する
 E→Explore options   その他の選択肢を探る
 T→Transform emotions  感情を転換する

という、物事が起きたときに振り返るプロセスのことです。このような関わりをしていったことで、少しずつ自分と子どもたちの間にあった心の距離のようなものがどんどん近づいていった気がしました。そして、卒業するころには本当に成長した彼らの姿を見ることができました。

教育でも、子育てでも特にトラブルなんかがあったときはつい、すぐに手を差し伸べたくなったり解決策を与えたくなったり、自分の価値観と違うと否定したくなったり・・・色々な想いがわきあがってきます。ですが、「トラブルをきっかけに成長する」という目的のために、焦らず、そして粘り強く子どもと向き合っていくことを私自身も今の現場で実践したり、伝えていけたらと思います。

参考文献|学校の「当たり前」をやめた。生徒も変わる!公立名門中学校長の改革 工藤勇一

 

 

 

 

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