子どもたちの成長に出会える幸せ
小さな成功体験の大切さ
2023年がスタートして、早速、地元私立学校の5~6年生の「演じる」プロジェクト学習に伴走している。実はこの子どもたちの半数とは、2年半ぶりの再会である。2年半の時を経てどのように変化したのだろうか。そんな期待もありつつ、ちょっぴりの不安も抱えながらの再会となった。
2年半が経過し、思春期の入り口に入っているわけだから、きっと「演じる」という行為自体に、ある種の抵抗感が生まれているかもしれない。そんな事も考えつつ初日の授業に向かった。
久しぶりの再会で大きく身長が伸びた子、少しはにかみながら美意識を感じ始めている子、前と変わらずハイテンションの子と、それぞれだったが全員一様に覚えてくれていたことが何より嬉しい。
中には、「ねえ、まんぼ、私のこと覚えてる?私はちゃんと覚えてるよ!」とわざわざ話しかけてくれる子もいた。
2年半前と同じように子どもたちはワークをやってくれるだろうか、という思いを抱えつつ始めてみると、その不安は一瞬で吹き飛んだ。演じるということを、2年半前経験していた子たちがどんどんその場をリードしてくれる。大体何をやるかも想像出来た事が大きいかもしれないが、その場を楽しむ力が更に増していたことに驚いた。演じるということはそんなにハードルが高くないよ、ということを知っているからか、彼らのエネルギーに初めて体験する子どもたちがどんどん引き込まれていく。
振り返りの中でも「演じる」っていうことがそんなに負担を感じている子が少なかったことが何よりの喜びだった。その中で「だって楽しい場っていうことを知っているから!」と語った子がいたのだが、この場は、心理的安全性が担保されているコンフォートゾーンである、ということを体感していたことが大きかったかもしれない。小さな成功体験を積み重ねた子どもたちの成長を目の当たりにした瞬間だった。
一つのアクションが大きく変容する
年明けもう一つ嬉しい再会があった。高校1年生のとある女子生徒。出会った時は、とにかく人見知りで、あまり言葉が出ない子だった。地元FM放送局のラジオ番組を子どもたちだけで制作するプロジェクトで、出会ったのだが、最初は、とにかくあまり多くは語らない。引っ込み思案でどちらかというと表に出ないタイプの子だった。
初回の取材でも出た言葉は、二言、三言。このままで番組を制作することなんて出来るだろうかと、伴走者としては不安でいっぱいだった。とある取材の日、この日はもう一人、快活な生徒が急遽お休みとなり、彼女しかインタビューアーはいない。さあ、どうする!と一抹の不安が過ったが、もうやるしかない!とスマホで書かれていた質問をしていく。声は震え、時々妙な笑いさえ沸き起こる。しかし確実に彼女が一歩を踏み出した瞬間だった。コンフォートゾーンからストレッチゾーンへの一歩、Out of the boxだ!「もうやるっきゃない!」と捨て身の行動が、その後の彼女を激変させた。
自分は出来るんだ!という自信、そして小さな成功体験が、彼女にやる気と活力を与え、番組放送を終えた時には、何とも誇らしい笑顔を見せてくれるまでになった。
そんな彼女は、今や高校3年生に成長。先日、高校の探究活動の発表会があり、町内のホテル大宴会場で何人かがスピーチするというので取材に出向いた。そこには彼女の姿もあり、笑顔で近寄ってきてくれ、
「まんぼさん、この後、スピーチするから見ててね!」
「OK!ばっちり取材するから、楽しみにしているよ!」
彼女のスピーチの出番が回ってきた。スライド順に、自分のプレゼンを淀みなく進めていく。壇上には、もう何も恐れるものはない、というくらいに堂々と変容した彼女の姿があった。これを感動と呼ばずして何と呼ぼう。実に嬉しい幸せな瞬間だった。
子どもたちが一歩を踏み出す言葉がけ
子どもたちは無限の可能性を秘めている。その可能性を開かせるか否かは、大人の投げかけにかかっていると言っても過言ではない。どんな言葉を伝えたら、彼らのモチベーションに着火することが出来るだろうか。その場を促進させる世のファシリテーターは、みんな考えていることだろう。
それには共感性の発揮が何よりも必要で、どういう言葉を紡ぎ出すか、その言葉一つで、子どもたちにフックがかかり、大きく成長していく。やはりそこにはEQの学びこそが如何に有益で、どんな現場でも活かせるのだ、ということを改めて噛みしめた2023年の幕開けだった。
さあ今年はどんな再会や出会いが待っているだろう。子どもたちとの時間が今年も続いていく。
生きる力をつくる・はぐくむをコンセプトとした
Art-Lovingというアートカンパニーで、演劇創作と演劇共育を中心とした教育事業に勤しむ。
舞台演出家・演劇共育実践家・ラジオパーソナリティ(FM軽井沢)として活動中。