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「海外子育て」という呪縛

縄

「海外で子育て」そう聞くと、どんなイメージを持つでしょうか。
どこかキラキラしていて、特別なものに聞こえるかもしれません。(これだけグローバル化した現代、もはやそんなキラキライメージを持っている人は少ないかもしれませんね。)

私自身、長年海外で子育てをしてきました。もちろん海外生活にはたくさんの魅力があります。自分が育ってきた場所とは違う、新鮮な環境で子育てすることは非常に刺激的であり、自分も成長させてもらいました。

一方で、その環境だからこそ生まれる「見えないプレッシャー」もあると感じています。
私はそれを勝手に「海外子育ての呪縛」と呼んでいます。誰かにかけられたものではありません。気づけば、自分で自分にかけてしまっている「呪い」のようなものです。

「せっかく海外にいるんだから」という呪文

海外子育てをしていると、よく聞く言葉があります。
それが、「せっかく海外にいるんだから」

せっかく海外にいるんだから英語を不自由なく使いこなせるようにさせたい。
せっかく海外にいるんだから異文化交流をたくさん経験させたい。
せっかく海外にいるんだから…

親として自然な願いです。
私自身も何度となくそう思ってきました。しかし気づくと、その「せっかく」が重荷に変わることがあります。

せっかくだからもっと英語を。
せっかくだからもっと経験を。
せっかくだからもっと選択肢を。

子どもの可能性を広げたいと思っていたはずなのに、いつの間にか親自身が「せっかく」に取り憑かれてしまうのです。

比較と、その奥にある感情

その「せっかく」をさらに加速させるのが、SNSや周囲から入ってくる情報です。

SNSを開けば、
英検1級に合格した子。
海外遠征やコンペに参加し活躍する子。
何か国語も話す子。
休みのたびに旅行へ行く家族。
そんな情報が瞬時に届いてきます。

「我が家は我が家のペースで」と思いつつも、そんな眩しい姿が目に入るたび、心がザワザワッとして、それと同時に、どこからか「うちももっとできるんじゃないか」という声が聞こえてきたりするんです。ここで、その声やザワザワに蓋をしようとすると逆効果。ザワザワはますます膨らんでいきます。イメージするなら、映画『となりのトトロ』に出てくる「まっくろくろすけ」のようなもの。 暗い箱に無理やり閉じ込めようとすると、奥からワワワッと溢れ出てしまう、あの感じです。

「比較すること自体」が悪いわけではありません。 比較のそばには、必ず大切な感情が隠れています。

不安、焦り、羨ましさ、置いていかれる恐怖、劣等感……。

問題は、その感情に気づかないまま動いてしまうこと。つまり、心のなかの「まっくろくろすけ=ザワザワ」を抑え込もうとしてしまうこと。そんなことをしてしまうと、いつの間にか「子どものため」という名目を使って、親である自分自身の「不快な感情」を解消しようと動いてしまう…そんなことが、往々にしてあるような気がします。

守りたいセルフイメージ

時折、自分に問いかけてみます。
「これは本当に子どものためだろうか?」

すると少し耳の痛い答えが返ってきます。
子どものためだけではない。「海外で素敵な子育てをしている私」というセルフイメージを守りたい自分がいる。

これは認めるのに少し勇気がいることです。
英語ができる我が子、グローバルな環境、特別な経験。 
それらを与えられている「いい母親」でありたい。
そんな思いが、いつの間にか行動の動機の一部になっていることがあるような気がしてならないのです。

呪縛に気づいた時、見える景色が変わる

「せっかく」も、「比較」も、「セルフイメージ」も、誰かから課されたものではありません。自分で自分にかけている呪縛です。でも、その存在に気づいた瞬間から、少しずつ見える景色が変わり始めます。

海外か日本かは、本質ではありません。
英語がどれだけ話せるかも。
どこの学校に通うかも。どんな習い事をするかも。
もちろん大切な要素ではあるけれど、それらはあくまで外側の要素。

大切なのは、「親子でこの人生をじっくり味わえているか」という感覚なのではないかと思うんです。
EQは、自分の感情に気づき、自分の価値観を知り、自分らしい選択をしていく力。

比較をしないことではなく、比較している自分に気づけること。
焦ってはいけないと思うのではなく、焦っている自分を認められること。
そして、自分に問いかけられること。
「私は本当は何を大切にしたいのだろう?」と。

海外子育てに限らず、情報や選択肢が溢れる時代、猛スピードで変化していく時代だからこそ、
その問いはますます大切になっている気がします。

私自身、きっとこれからも何度も比較し、焦ったり、見栄を張ってしまったり、揺れたりするのだろうと思います。
それでも、そのたびに立ち止まり、自分の内側に耳を傾け、本当に大切なものを見つめなおし、
親子でじっくりこの面白い人生を味わいながら、納得感ある選択をしていきたいなと思います。

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