ゆるく始めた「20分の散歩」がもたらした、しなやかなメンタル

「なんだか最近、心がモヤモヤする」「嫌なことがあると、いつまでも考え込んでしまう」 そんなとき、私たちはつい「考え方を変えよう」とか「ポジティブになろう」と、心の内側で解決しようとしてしまいがちです。しかし、どれほど思考を巡らせても、出口が見つからないことは多いものです。
私自身の経験からお伝えしたいのは、**「心のコンディションが整わないときこそ、まず身体を整えること」**の重要性です。特に、無理のない範囲での「運動」は、脳の土台を整え、私たちの思考を驚くほど前向きに変えてくれる力を持っています。
今回は、私が10月から始めた「20分の朝散歩」を通して実感した、身体と心の深い繋がりについてお話しします
五感をひらく「歩行瞑想」が、脳のスイッチを入れる
私が朝の散歩を始めたのは、10月頃のことでした。きっかけは、ゴミ出しのついでに少し歩いてみようという、ごく軽い気持ちからです。時間はわずか20分。しかし、ただ歩くのではなく、一つだけルールを決めました。それは**「五感に意識を向ける」**ことです。
頬をなでるひんやりとした風の感触、朝露の匂い、遠くで聞こえる鳥のさえずり、そして地面を蹴る足の裏の感覚。これらに集中して歩く「歩行瞑想」を取り入れました。
もちろん、歩いている最中に「今日の仕事、あの件どうしようかな」と雑念が浮かぶこともあります。そんなときは、気づいた瞬間に心の中で「あ、いま思考(雑念)が湧いたな」とラベリングし、再び足の裏や風の感覚に意識を戻します。
これを継続した結果、朝の散歩が一日を始めるための「アップ」となり、心身にスイッチが入る感覚が定着しました。実は、運動には脳の神経可塑性を高め、感情を司る領域を安定させるという科学的なエビデンスもあります。運動によって脳のコンディションが整うことで、ポジティブな感情が湧きやすい「土台」が作られていくのです。
「メタ認知」が育ち、ストレスに振り回されなくなる
この習慣を続けていくうちに、私の中に劇的な変化が訪れました。それは、圧倒的にストレス耐性が強まったことです。
以前は、何かネガティブな出来事が起きると、そのことについて「ああなったらどうしよう」「どうしてあんなことを言われたんだろう」と余計な思考を巡らせ、自ら疲弊してしまうことが多々ありました。しかし、歩行瞑想を通じて「自分の状態を客観的に見る練習」を繰り返したおかげで、日常生活でも**メタ認知(自分を客観視すること)**ができるようになったのです。
ネガティブな渦に飲み込まれそうになった瞬間、「あ、今自分は余計なことを考えすぎているな」と一歩引いて気づける。その気づきさえあれば、思考の暴走を止めることができます。結果として、脳のエネルギーを無駄遣いせず、柔軟な思考を保てるようになりました。
「身体が整っているから、思考がクリアになり、感情が安定する」。この順番こそが、メンタルケアの本質だと痛感しています。
「ゆるい習慣」が、今の私を支えている
運動が良いと聞くと、つい「毎日欠かさずやらなければ」「ハードに追い込まなければ」と思いがちですが、挫折の原因の多くはここにあります。私の散歩習慣が続いている最大のポイントは、「だいたい毎日できればいい」という、ゆるい意識です。
天気が悪い日や、どうしても気分が乗らない日に休んでも、自分を責めることはしません。大切なのは完璧主義を目指すことではなく、自分のコンディションを整える手段を一つ持っておくことだからです。
最近では、朝に散歩でスイッチを入れ、夜は入浴剤を入れたお風呂で「マインド風呂ネス」をして一日をリセットするという、自分なりの黄金サイクルができました。身体を動かして脳を整え、身体を温めて心をほぐす。この循環が、私を「今、この瞬間」に繋ぎ止めてくれています。
最後に:心が重いときこそ、靴を履いてみる
もし今、あなたが「心が晴れない」「疲れが取れない」と感じているのなら、ぜひ一度、外に出て少しだけ身体を動かしてみてください。
運動が抑うつ状態に対して大きな改善効果を持つことは、多くの研究でも証明されています。それは決して魔法ではなく、身体を整えることで脳が本来の健やかさを取り戻し、結果として心が前を向くという、極めて自然なメカニズムです。
激しい筋トレである必要はありません。ゴミ出しのついでに、近所を一周するだけでも十分です。 「心のコンディションは、身体から整えられる」。 その手応えを、ぜひあなたの身体で感じてみてください。
明日の朝、ベランダに出るか、あるいはゴミ出しのついでに「5分だけ」外の空気を吸いながら歩いてみませんか?その時、足の裏が地面に触れる感覚を、じっくり味わってみてください。

金融機関での勤務や9年間の公立中学校教師生活を経て
現在は放課後等デイサービスで学習指導やSSTを行う
自分自身も、子どもたちも「自分らしく生きて幸せに」というモットーのもと
教育に携わっています